gn8mykitten

gn8mykitten(グッドナイトマイキトゥン)
福岡県在住のラッパー/詩人。長らくステージではマイク一本・無伴奏のスタイルを貫いていたが、近年はギターを携えて表現の幅を広げている。
同人誌「Cross」に掲載したリリックが2024年1月24日の西日本新聞朝刊に取り上げられる。

おれが全部持ってく

誰の勝ち 誰の負け
誰が何点 誰が優勝
そんな世界に馴染めなくて
ずっと一人で詩を書いてた

ロクに挑戦もせずウダってた
テレビじゃ年下が歌ってた
成功者の椅子は埋まってた
平凡な人生が待ってた

会ったこと無いセレブ恨んでた
そうでもしないとなんか不安でさ
我ながら思う俺つまんねえな
マイクならとっくに掴んでた

あとはもうやるかやらないか
明け方にカラスが羽ばたいた
初めてのライブ 震えた脚
見せるものは 見えない魂

客いないフロアほんと痛ましい
てか わかる奴だけいたらいい
なんて負け犬の遠吠えもうしない
自分なりの筋を通したい

時々見返す昔の写真
耳を赤くし思い出す初心
歴史には通じない言葉「もし」
だから今の時だけが欲しい

25分から30分
短いときはたった10分
許された時間はそれだけ
上等だよ それだけあれば

俺が全部持ってくからな
俺が全部持ってくからな
喝采も罵声も拍手も嘲笑も
俺が全部持ってくからな

そう偉そうに啖呵を切っといて
本番前何度も行くトイレ
緊張こそが俺のモチベーション
こなれる気なんてもちねえよ

出番前はいつもナーバスです
まじないやジンクスなら捨てる
ハロー こんにちは ナマステ
喉という打楽器 鳴らすぜ

で ド頭から歌詞を忘れ
中盤じゃあらあら声が掠れ
あの夜の悔しさだけは忘れん
一生ひきずりながら這え明日へ

くじけても何度も立ち上がる
続けることに価値がある
時々サボってバチ当たる
自分からやらなきゃ始まらず

俺の目の前には無い譜面台
それよりあなたの目を見つめたい
なんて言うのはやっぱりキモいかい?
あなたの目に映ってる陽の光

その輝きが俺を照らす
ライブハウスで待ってます
チケ代 交通費 ドリンク 飯代
払うお客さんを舐めたマネしない

25分から30分
短いときはたった10分
許された時間はそれだけ
上等だよ それだけあれば

俺が全部持ってくからな
俺が全部持ってくからな
喝采も罵声も拍手も嘲笑も
俺が全部持ってくからな

師匠も先生もいやしない
自分で自分の才養い
役立たずで社会の捨て石の
俺でもやっと立てたステージ

お疲れ様でした よかったですよ
いえいえそちらこそ とんでもない
あの SNSとかやってますかって
仲良しごっこがしたいんじゃない

大嫌いだよ内輪ノリ
あれに甘えっぱなしのうちは無理
似たような奴らとつるむより
自分だけの歌を紡ぐのみ

ステージで誰がはにかむもんか
ベテラン勢には歯向かうもんさ
もちろん礼儀は尽くしますが
あぐらかいてたら潰しますわ

5分押し 10分押し
まあ事情はいろいろあるけどさ
俺はお客を待たせたくない
ずっとフロアに立たせたくない

予定調和のアンコールセッション
よりも一夏の蝉の絶唱
のような歌こそを聞かせたい
そのために生まれてきた世界

25分から30分
短いときはたった10分
許された時間はそれだけ
上等だよ それだけありゃ

俺が全部持ってくからな
俺が全部持ってくからな
喝采も罵声も拍手も嘲笑も
俺が全部持ってくからな

俺が全部持ってくからな
   

自由を

服を脱がされ 両手を縛られ 目隠しさせられ 暴行を受ける
学校 病院 難民キャンプ 食糧配給所が 空爆 銃撃の標的になる
親を亡くした子供 子供を亡くした親 皆殺しにされた家族

Free Palestine
Free Palestine
パレスチナに自由を

平和は祈るだけでは決して実現しない
自由は願うだけでは決して叶わない
愛は想うだけでは決して実らない
Imagine 想像し 行動を

賢い人たちは黙ってる
YesもNoも言わず ただ待ってる
じゃあおれは何ができる
銃よりギターを持ちたい軟弱者が

お前が歌っても何も変わらない
それより人間の盾になってくれば?
偽善だ 売名だ 自己満足だ
そんな向かい風が吹く中 今

Free Palestine
Free Palestine
パレスチナを解放せよ

Free Palestine
Free Palestine
パレスチナに自由を

Free Palestine
Free Palestine
パレスチナを解放せよ
   

歌なんて歌ってる場合か

毎朝 毎朝 計る体温
はよマスク外して遊びたいよ
まさかこんなに長引くとはね
ペン字の練習してる とめとはね

ロシアの文豪くらい髭伸ばすか
ステイホームで聞いてるボサノバ スカ
空は晴れ 雲一つ無い天気
だけどやっぱりライブは延期

そんな状況でも俺を呼んで
くれる店があるなら喜んで
出るよライブが好きだもん
けどやっぱり不安がつきまとう

100%の安全は無い
けど高を括るの断然ヤバい
告知さえなぜか後ろめたく
今はみんなの無事を願う

客がゼロでもノルマを払えば
お店にお金が落ちるわけで
でもこんな状況だからって
ノルマまけてくれる店とかあって

おれ無力でも今は続けるんだ
このバースを一つずつ蹴るんだ
いつのまにかここにたどり着いた
寄り添ってもらえてたと気づいた

歌なんて歌ってる場合かって
何度も自分に問いかけた
歌なんて歌ってる場合だって
何度も自分に言い聞かせた
こんな世界に絶望しないために
こんな世界を祝福するために
こんな時代に殺されないために
こんな時代を踊り明かすために

中止になったイベントの数々
全部チャラにできるはずなく
悔しさまとめて背負い込む
来年こそあの場所行こう

断った県外からの誘い
今はもうちょっと待ってください
本当におれは全くダサい
慎重っていうか臆病だね

地元のハコで無観客
人気無いフロアでスタンバる
最新の機材で配信に乗る
誰かが観ていると信じてる

はじめはやっぱり辛かった
けど歌えばどこかに繋がった
遠くに住む人に伝わった
状況は少しずつ変わった

でも大切なのはやっぱ金
おれのライブじゃ経済は動かねえ
嘘じゃね?もらったじゃん投げ銭
誰も聞いてないとは言わせん

落ち着いたらライブ観に行きますって
何人もの人が言ってくれた
約束が俺を繋ぎ止める
出口必ずあるこの暗いトンネル

歌なんて歌ってる場合かって
何度も自分に問いかけた
歌なんて歌ってる場合だって
何度も自分に言い聞かせた
こんな世界に絶望しないために
こんな世界を祝福するために
こんな時代に殺されないために
こんな時代を踊り明かすために

ウイルスが暴いた人の醜さ
そりゃあおれだって見せたさ
いくつかを歌にして残しとく
自分にかけられた呪い解く

誰も無傷じゃいられない
コケながら光追いかけたい
我思う故に我悩む
ワクチン接種の列に並ぶ

俺の歌じゃ病気は癒やせず
じゃあ黙っとけ?嫌です
大切にする喜怒哀楽の怒
言いたいことを言うためにある喉

世界が変わったパンデミック
命は1個 人生1テイク
あんときは大変だったねって
語り合えるまであと少し

おれかかるのはまだしもうつしたくない
今日も飯がうまい 靴下くさい
味覚嗅覚はまだある
生き延びて好きな人とまた会う

疫病もだけどあと自然災害
人間ってほんとちっぽけ
いつ死んでもおかしくないと知っとけ
家族仲間と笑い合い年取れ

歌なんて歌ってる場合かって
何度も自分に問いかけた
歌なんて歌ってる場合だって
何度も自分に言い聞かせた
こんな世界に絶望しないために
こんな世界を祝福するために
こんな時代に殺されないために
こんな時代を踊り明かすために

歌なんて歌ってる場合か
歌なんて歌ってる場合だ